現在、最も国際的な活躍が目覚しい日本人指揮者の一人である湯浅卓雄は、大阪に生まれ、高校卒業と同時にアメリカに留学。

シンシナティ大学音楽院作曲理論科を経て、ウィーン国立音楽大学指揮科でハンス・スワロフスキー、フランコ・フェラーラ、イーゴリ・マルケヴィッチ、ロヴロ・フォン・マタチッチに師事。特に長年巨匠マタチッチのアシスタントを務めた。

1976年 ウィーン・トンキュンストラー管弦楽団を指揮してデビュー。

1979年 フィテルベルク国際指揮者コンクールに入賞するが、その際オーケストラが独自に特別賞を授与したことが話題となり、ワルシャワ国立フィル、ポーランド国立放送交響楽団などの定期演奏会に度々登場するなど、欧州各地で着実に実績を重ねる一方、1984年から5年間群馬交響楽団指揮者も務めた。

 

 1990年 ロンドン・フィルを指揮して各地で大成功を収め、EMIにもレコーディングを行う。リムスキー=コルサコフ:『シェエラザード』やプロコフィエフ:『キージェ中尉』のディスクはトーマス・ビーチャムやアンドレ・プレヴィン、サイモン・ラトルらの演奏とともに、HMV Classics シリーズにセレクトされている。

 続いてEMIからは1994年にロイヤル・リヴァプール・フィルとの協演による『ブリテン:管弦楽曲集』をリリース。英グラモフォン誌等より最高級の賛辞を与えられた。

 

 1989年から1994年までBBCスコットランド交響楽団首席客演指揮者、1997年から2005年まで英国・アルスター管弦楽団首席客演指揮者を務める一方、ロンドン・フィル、ロイヤル・リヴァプール・フィル、BBCナショナル・ウェールズ管弦楽団、ハレ管弦楽団、ボーンマス響、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団等、英国の主要オーケストラや、アイルランド国立響、オスロ・フィル、ノルウェー放送響、デンマーク放送響、ラハティ響、ベルリン響、ザグレブ・フィル、ルクセンブルク・フィル、シドニー響、ニュージーランド響、スコティッシュ・オペラなどに度々客演して、常に高い評価を得ている。

 

 湯浅卓雄の演奏はBBCをはじめとする世界各国の放送などにおいても度々紹介されているが、1996年からは、世界有数の流通量を誇る話題のCDレーベルである『ナクソス』と専属契約を結び、次々とリリースされるCDは常に大きな注目と高い評価を獲得している。中でも注目を集めている「日本作曲家選輯」では中心的な役割を果たしている。近年、2005年 2月のロンドン・フィル定期公演が絶賛。4月には、BBCナショナル・ウェールズ管弦楽団からの緊急要請により、急遽同団のドイツ・オーストリア演奏旅行に同行し、BBCやオーストリア放送協会による中継放送を含むプロジェクトを大成功に導く傑出した手腕への信頼は極めて高いものとなっている。

その後もフィリップ・ヘレヴェッヘが音楽監督を務めることにより、急激に注目を集めている、ロイヤル・フランダース・フィルから2005以来毎シーズンにわたり、定期的な客演を招請されるなど、多忙で充実した活動を続けるほか、最近ではフランス、スペイン、ポルトガル等にもその活動の場を広げている。

 

日本では1996年~2003年まで8回にわたり大好評であった、大阪いずみホール主催のコンサートオペラ・シリーズを指揮。特に2003年に上演されたベートーヴェン:『フィデリオ』は空前の盛り上がりを示して大成功を収めた。

2005年11月には大阪センチュリー交響楽団特別演奏会『ブラームス:交響曲全曲チクルス』を、更に2006年 1月には東京都交響楽団定期公演、2月には関西フィル定期公演に登場し、多くの聴衆から熱意ある賞賛を得ている。

2006年9月~11月には『湯浅卓雄/大阪センチュリー交響楽団 シューマン:交響曲全曲&主要管弦楽曲・協奏曲チクルス』。絶賛を博した両ツィクルスの実況録音は後日『ブラームス:交響曲全集』『シューマン:交響曲全集』CDとしてリリースされ、各音楽誌などで特選・推薦盤などに選ばれ、更にその成果により、井植文化賞文化芸術部門を受賞。2007年には英国ハダスフィールド合唱協会等を招いて、大阪フィル、いずみシンフォニエッタ大阪をはじめとする日本勢とともに、ブリテン:『戦争レクィエム』を演奏。関西で三十余年ぶりとなった同曲の再演もまた、ひときわ意義深い公演として大きな話題と賞賛をもたらされた。

2002年以後 関西フィル定期公演に度々登場、2006年には東京都交響楽団定期公演にも初登場、2008、2009年には神奈川フィル定期公演において、エルガー:交響曲全2曲を共演するなど、いずれも高水準の演奏を展開。新聞・音楽誌などからも高い評価を受けるのみならず、多くの聴衆から熱意ある賞賛を得ている。